スメタナ-ヴルタヴァ(モルダウ)川と国民劇場

4月13日の定期演奏会で演奏する「Vltava(ヴルタヴァ)」は、チェコの作曲家スメタナが作曲した6つの交響詩からなる連作交響詩『我が祖国』の2曲目です。日本でも「モルダウ」として親しまれており、合唱で歌ったことのある方はたくさんいらっしゃると思います。日本語の歌詞を付けて小中学校の授業で歌われることになった経緯は定かではありませんが、確かに日本人の音楽感に馴染みやすい旋律ですね。
チェコ語では「ヴルタヴァ」、さて「モルダウ」は?というとドイツ語なんです。スメタナが生まれた頃のボヘミアはオーストリア帝国に支配されており、チェコ語は禁止されドイツ語の使用が強制されている時代でした。それが後にスメタナをたいへん苦しめることになります。隣国ハンガリーがオーストリア帝国から事実上の独立を果たしたのをきっかけに、チェコでも自国のアイデンティティーを取り戻そうという運動が起きて音楽においてもその気運が高まり、チェコオペラを上演できる立派な劇場を作ることが決定します。スメタナは後に建設される国民劇場の仮劇場の支配人に就任するのですが、チェコを代表する国民楽派としてスメタナを推す一派と、チェコを離れてドイツ音楽圏で活動していたりチェコ語が流暢に話せないスメタナを国民楽派として認めない一派の対立からくるストレスで心身ともに病んだスメタナは支配人の座を辞することとなります。


その後国民劇場はスメタナのオペラ『リブシェ』の初演をもって開場、一度火事で焼失してしまったものの、病身でありながら資金調達に奔走したスメタナと国民からの寄付により再建され、再びスメタナの『リブシェ』の上演で再開されました。今もなおスメタナの魂と共に、ヴルタヴァ川とプラハの街を見守るようにチェコ音楽のシンボルとしてそこに建っています。

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